令和6年度介護報酬改定の内容を見て思うこと

高齢福祉・介護保険

子育て支援や学校教育の施策だけではなく、介護報酬の設定に関しても、「ヤングケアラー」に配慮した内容となった。

 厚生労働省は、人口構造や社会経済状況の変化を踏まえ、「地域包括ケアシステムの深化・推進」「自立支援・重度化防止に向けた対応」「良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」「制度の安定性・持続可能性の確保」を基本的な視点として、介護報酬改定を実施している。

 令和6年度の改定において注目したのは、下記の厚生労働省が公表した「1.地域包括ケアシステムの深化・推進」「居宅介護支援における特定事業所加算の見直し」の中で、2年ほど前から新たな課題として注目されている「ヤングケラー」に関する表記が目立った点である。

 居宅介護支援における特定事業所加算の算定要件について、ヤングケアラーなどの多様な課題への対応を促進する観点等から見直しを行うという内容で、算定要件として、『多様化・複雑化する課題に対応するための取組を促進する観点から、「ヤングケアラー、障害者、生活困窮者、難病患者等、他制度に関する知識等に関する事例検討会、研修等に参加していること」を要件とするとともに、評価の充実を行う。』ものと規定されている。

【参考】厚生労働省HPの該当ページ

令和6年度介護報酬改定について

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001230330.pdf

介護報酬には複数の細かい条件等があり、改定ごとに、市町村の介護担当部局のみならず、当該介護サービスの提供事業者による「十分な熟読」と「要件理解」が不可欠となる。

 特に、制度開始時点からの要介護者への既存サービスよりも、要支援認定者や介護予防が期待できる者へのサービスや介護指定事業者などのマネジメントや資質向上に関するメニューもかなり深化していることが理解できる。具体的には、制度開始直後は、要介護状態となったら特別養護老人ホーム等への入所が基本とされた時期があったが、生涯入所系の施設サービスには、かなりの公的費用を要することから、次第に保険者である市町村の運営を圧迫する傾向となった。以降は、介護予防や在宅でのサービス提供等に主眼を置いた介護保険制度内容や報酬の改訂が行われてきた。

 この厚生労働省による頻繁な制度改正等に対応するため、介護サービスに関与する従事者においては、毎年改定される介護報酬の内容を改訂前とどのように変わったのかを十分に理解した上で、自己の事業所が持つ資質(従事者数、有資格者数、関連事業者との連携状況等)で十分に対応できるかどうかを再評価しなければならないということである。この再評価(戦力分析)を怠ったまま、改訂後の報酬が上げられたサービスの提供を行うことは、介護保険法の趣旨に反することとなり、十分な効果を発揮できないだけではなく、最悪は、要件を満たしていないことで指定の取り消しなどに至ることも想定される。

 そのようなことから、まずは、介護保険サービスや介護予防サービスを保険者として運用する市町村の担当者が、制度や改訂内容等を熟知しておくことが前提となる。幼児教育・保育制度や障がい者総合支援法関連のサービスも含め、実際、福祉分野の制度改正はかなり多く、地方自治体の担当部署の資質向上やサービス提供者への研修や監査体制の構築は、年々かなり重要となってきている。

 言い換えれば、ここまで毎年改定があるのであれば、一般的な専任者からの「事務引き継ぎ」のみでは不十分と言え、年度当初の関係法の熟読は不可欠な状況である。

 

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