契約書等の行政書類の「日付」について

地方自治体の重大なミス

全国的に頻発する行政職員の書類偽造等の不祥事案件

宮崎県の延岡市は3月5日、2021年度に山間地道路整備などを盛り込む辺地総合整備計画を担当していた30代主任主事が、計画に関する市議会の議決証明書を偽造し県に提出していたと発表。

整備計画に必要な宮崎県との協議が整う前に延岡市議会の議決を受けたため、つじつまを合わせるために日付などを書き換えたという内容。読谷山市長は謝罪し「告訴告発の手順を進める」と述べた。

このニュースを見て、少なくとも30代職員には偽造するメリットはないため、「本当に業務が逼迫して精神的余裕がなかった」、「最終的には議決されるので、並行または前倒して業務を進捗させたかった」などが想像される。個人的には、市長の「告訴告発」という発言は、若手職員にとってはかなり厳しいと感じた。立場上やむを得ないと言えばそれまでだが。

市長、部長、課長、係長などの上司の責任は

地方行政事務事業を遂行する上で、「実務を行う職員」(部下)と「決裁審査や進捗管理を行う職員」(上司)に分かれる。まあ民間企業もほぼ同様であろう。

公文書の偽造は当然やってはいけない行為であるが、この行為に至った背景や理由はどうだったのだろうか。議決証明が必要なレベル(国や都道府県の補助を伴う)の事業であれば、市議会関連ということもあり、ベテラン職員に任せるか係長以上が自らその部分だけを行ってもよかったと思う。

地方自治体職員は、国が新たな事業等を創設するたびに、徐々に過度な業務負担になってきている現状がある。そのようなことから、これまでは、部下の研修や事業の進捗管理等に専念してきた係長や課長補佐級が自分の担当事業を持たなければいけなくなり、結果として「審査」や「事業進捗管理」が疎かになっている背景もあるようだ。また、職員増加をともなわない「働き方改革」も職員の業務や審査時間への足かせとなっている。

全国的にこのような不適切な事務処理が報道されるたびに、私利私欲や悪意のない職員が一気に全国的に非難される事態になってしまう現状を、個人的には危惧している。(※上司との円滑なコミュニケーション関係があれば防止できる不祥事はたくさんあるだろうと思う。)

日付の遡り処理は止めよう、避けよう。時系列には整合性を。会計年度と出納整理期間の区別を。

私自身、4年間、中核市の会計課(出納室)で書類審査業務を担当した経験があり、その中でも、関係書類の「日付に関する誤り」は多数発見してきており、その都度、担当職員やその上司に指導や説明を行ってきた。日本中の会計(出納)担当職員であれば、同じような経験や思いをしていることであろう。

日付の整合性がとれていない書類を支出審査に回してくる職員が、前任者や同僚にどのような説明や引き継ぎを受けたのか見えてくる。年度後半になると「〇〇課の書類、□□さんの書類には特に注意!」とレッテルを貼らざるを得ないことも多々ある。

出納整理期間であれば前年度予算の執行をしてもよい等と勘違いしているレベルの若手職員もいる。4月1日以降に検査検収をしても3月31日と日付を書けばよいと指導する若手の成長を阻害する上司もいる。

ただし、ここで言いたいことは、「部長や課長以下、決裁印を押した職員(上司)はどこを確認・審査したのか?」ということである。外部に書類が出る前に正しい書類(特に金額と日付)にしておくことが管理者の大きな役割の一つなのである。

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