教育機関としての「文部科学省」と福祉機関としての「厚生労働省」
日本の教育、科学技術、学術、文化等をつかさどる「文部科学省」は、明治4年に設置された文部省から始まり、平成13年の中央省庁再編により、文部省と化学技術庁を統合して現在に至っている。
一方、健康、医療、福祉、介護、雇用、労働、年金等をつかさどる「厚生労働省」は、昭和13年に設置された厚生省から始まり、社会保険庁等の外局設置などを行いながら、平成13年の中央省庁再編により設置された。
文部科学省は教育機関としての「幼稚園」、厚生労働省は児童福祉施設としての「保育所」を設置することで、幼児期(小学校就学前)の児童に関する事業をかなりの長い期間、それぞれが独立して実施してきた。
親が仕事や病気で日中子どもの世話ができない世帯については、「保育に欠ける」という要件により保育所へ入所(措置)することが可能で、保育の必要性がない世帯は、家庭での世話または幼稚園への通園という形態が一般的であった。
なお、幼稚園も保育所も昭和22年の「学校教育法」及び「児童福祉法」の制定に伴い設置され、幼稚園では幼稚園教諭が、保育所では保育士が、専門職として幼児期の児童の対応を行った。
この2省の体制は小さな再編や改正などはあったものの平成27年度に「子ども・子育て本部」が設置されるまで65年以上続いた。
内閣府がトップとなって文部科学省と厚生労働省を含めた「子ども・子育て本部」を設置
平成27年4月1日、内閣府は、子ども・子育て支援法の施行に基づき、特別機関として「子ども・子育て本部」を設置し、文部科学省と厚生労働省との調整を図りながら、各種子ども関連施策や事業を開始した。
子ども・子育て本部設置後、日本中に設置された施設や事業として、「幼保連携型認定こども園」や「企業主導型保育事業」などがあげられる。
それまでは福祉施設の「保育所」または教育施設の「幼稚園」というシンプルな形態であったため、新制度以降、複雑化した幼児対象施設の選択に混乱を招いたという状況も見受けられたものの、施設の目的や内容の違いを理解している保護者にとっては、「自己選択の範囲や種類」が増加した。
なお、幼保連携型認定こども園に勤務する職員は原則「保育士の資格」と「幼稚園教諭の免許」の両方を所持する者(保育教諭)と規定されたため、全体的な質の向上が図られた一方で、各施設においては有資格者の確保に苦労することとなり、現在も継続している。
この「子ども・子育て本部」であるが、3つの国の機関が関連しているため、責任の所在や関係法の理解しにくいという批判もかなり多かった。(※既存の教育基本法や児童福祉法などの準用が多く、数種類の法律を並べながら読み込む必要がある。)
結果、10年に満たない期間で「子ども・子育て本部」は廃止となり、現在の「こども家庭庁」に引き継がれることとなった。
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